廃的音楽



ここではgasの独断と偏見に基づいた、廃墟をイメージさせる音源を紹介していきます。


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piana - ephemeral   (happy, 2005)
海外での評価も高い盛岡在住のエレクトロニカお姉さん、pianaの2ndアルバム。タイトルの「ephemeral=儚さ」は、pianaの発する声、音そのものだ。いつかは誰もが離れていってしまう・・。そんな切なさを秘めた、彼女の天使のような声がリスナーを優しく包み込む。
ピアノやギター、チェロなどの生楽器とキラキラした音たちを丁寧に重ね合わせ、そっと、赤ん坊をあやすように囁く歌声が素敵。耳を澄ますと微かに聴こえてくるノイズもいい。日本語で歌われた曲たちからは、安らぎに満ち溢れた感情が伝わってくる。・・そうか、これが母性なのかな。
something's lost(PV)  mother's love
the cinematic orchestra - ma fleur  (ninja tune, 2007)
ジェイソン・スウィンスコーを中心としたシネマティック・オーケストラ。前作「everyday」から5年ぶりとなる本作は、人生における「愛と喪失」をテーマにした、物語的なアルバムとなっている。
必要最低限な音のみで構成された壮大かつ深遠なアンサンブルは、心の奥底を揺さぶり、忘れかけていたノスタルジーを鮮明に蘇らせる。冒頭の「to build a home」では、さまざまな感情を押し殺したように奏でられるピアノと、それに応えるかのごとく切なく歌い上げるパトリック・ワトソンの声に、気がつくと涙。あの聖地マヤカソが、もし荒野にポツンと建っていたとしたら、こんな音風景が広がっているだろう。
to build a home
 child song
F.I.B Journal - Routine4229   (basis, 2006)
あらゆるジャンルから良質な「音」を発信し続けるBASIS RECORDSより、そのライヴパフォーマンスも定評のある男前ジャズトリオ、F.I.B Journalの2ndがリリース。無声の廃墟ロードムービーに、このアルバムをさりげなく流したらきっと合うだろう・・と思ったので紹介。
スリリングに弾かれるウッドベースはEGO WRAPPIN'の真船勝博。芯のしっかりしたドラムは骨太のグルーヴを作り上げ、仕上げは山崎円城による激渋のポエトリー・リーディング!紫の煙が立ち込める、ダンディズムあふれるハードボイルド・ロック・ジャズ。

how to make a poet  disguised saint
o.n.o - six month at outside stairs   (TBHR, 2003)
THA BLUE HERBのトラックメイカー、o.n.oの1stソロアルバム。TBHではどうしてもbossのMCに耳が傾いてしまうが、ここでは彼の強烈な個性を存分に味わうことができる。
暗闇からじわじわと迫りくるようなビートが、廃墟の重たくよどんだ空気と調和する。各トラックごとにまったく異なる表情をもち、共通項は先の読めないドラムパターンと、アルバム全体からただようオリエンタルな空気。どの系統にも属さない、確固たる存在感を突きつける一枚だ。

試聴(全曲)
a lily - wake: sleep  (dynamophone, 2006)
UKのポストロック集団、YNDI HALDAのギタリストであるJames Vellaによるソロプロジェクト。しっとりと聴かせるエレクトロニカで、生音と電子音、ボーカルとノイズの混ざり具合が絶妙。ゆらゆらと音に浸れる感覚を楽しめる。
やわらかくて繊細な音色に、心地よいメロディがドラマティックに展開される。聴きこんでいくごとに一音一音が体の隅々まで行き渡り、五感をゆっくりと溶かしてゆく・・。ベストロケーションは淡い光の差し込む安らぎの廃墟、時山第二発電所
i am to you(PV)  試聴(全曲)
photek - modus operandi  (science, 1998)
黒澤明をこよなく愛するUKドラムンベース界のサムライ、フォーテック。無機質で不穏な空気を孕んだ音像は、闇に包まれた巨大な廃工場がよく似合う。
「七人の侍」や「五輪書」といった、日本の武の精神をモチーフにした独自の世界も展開し、無駄を削ぎ落としたストイックなサウンドは、もはや侘び寂びの境地。特に「二天一流」という宮本武蔵の兵法の名を冠したトラックは、音と音の「間」を巧みに使った緊迫感がものすごい。ブレイクには映画「用心棒」のセリフがフィーチャーされており、衝撃的。

Ni Ten Ichi Ryu(PV)  試聴(全曲)
under byen - det er mig der holder traerne sammen (spv, 2002)

またも北欧より、デンマークのバンド、オナ・ビューエンの2ndアルバム。ヘンリエッタのvocalはビョークと非常に似ていることで知られているが、悲壮感と緊張感の漂うこちらの方がより廃墟的。その彼女の声をピアノやアコーディオン、チェロなどの生音がそっと包み込んでいく。冷たく透き通った北欧の空気を現すかのような妖しくも美しい音色に、心の震えがとまらない。
チェコのクリエイター、Amanita Designによる「plantage」のPVは、このバンドのもつ世界観を見事に具現化している。一見の価値あり!
plantage(PV)
sigur ros - agaetis byrjun   (fat cat, 2000)
はアイスランドより、今や「世界で最も美しいロック」の謳い文句をほしいままにしているシガー・ロス。その名を全世界へと知らしめたのがこのセカンドアルバムだ。
彼らの奏でる唯一無二のサウンドスケープは聴く者を一瞬にして別世界へといざない、体験したことの無い感情の嵐を引き起こす。音の重なりの奇跡的なまでの神々しさは、北欧の遺伝子の為せる業なのか。
svefn-g-englar(PV) ny batteri(LIVE)
one day diary - fantastic laboratory (rallye label, 2007)
初めて聴くのに、なぜか懐かしく感じるメロディ。それは、みんなが持っている遠い記憶のあの風景。名古屋出身の二人組みユニット、one day diaryのデビューアルバム。
幻想的で美しい音の重なりに、どこか物憂げなvocalが優しく寄り添う。エレクトロニカという範疇を飛び越えた天国ような多幸感に満ち溢れたサウンドは、どんな場所でも余すところなく溶け込んで、世界にひとつしかないone day diaryの風景を描き出す。

試聴(my space)
V.A. - 廃墟へ行くつもりじゃなかった  (indr, 2007)
何をやっても吉と出る、楽しさいっぱいの東海秘密倶楽部より、まさに廃墟のための素晴らしいCDが届きました。asana, one day diary, murr murr・・・と、スピリチュアルな世界観をもつ国内アーティストを独自の人脈でセレクト。その筋の人にも、そうでない人にもグッとくる展開に、初の試みながらもクオリティの高さが伺える。
「廃墟ノスタルジア」で一世を風靡した、三五繭夢さんの撮りおろし写真が満載のブックレットの付いた、なんとも贅沢な一枚。

試聴(公式サイト)

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