廃的音楽



ここではgasの独断と偏見に基づいた、廃墟をイメージさせる音源を紹介していきます。


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rei harakami feat. 原田郁子 - colors of the dark (sublime, 2006)
満天の星空を眺めていると、ふと自分が自分でなくなるような感覚に陥ることがある・・・。そんなセンシティブな気分なときにピッタリのCDがこれ。500万個もの星を投影するというお台場の日本科学未来館のプラネタリウム、MEGASTAR-II cosmos。そのオリジナルコンテンツである「暗やみの色」のサウンドトラック。
音楽をレイハラカミが担当し、谷川俊太郎がこのために書き下ろした詩を原田郁子がナレーションするという、素敵すぎる組み合わせにうっとり。唯一惜しいのは、完全初回プレスのみという流通の少なさ。
『暗やみの色』オープニング 
kuniyuki - we are together  (mule musiq, 2006)
kuni, koss名義でも活躍している札幌在住の高橋クニユキ。彼のシングルやリミックス、未発表曲からなる集大成的な1stアルバム。ディープハウス、ジャズ、ブレイクビーツなどのアプローチを軸に、ピアノ、フルートといった生楽器やパーカッションの力強い音をスピリチュアルな空気で統一した楽曲たちは、いまだ見ぬ秘境を自由に思い描かせる、壮大で神秘的なサウンド。
「廃墟」というひとつの完結された世界の中で、ひっそりと、しかし逞しく息づく生の気配。やがてそれは躍動する大地のリズムとなって体を伝う。終わりとは、同時に新たな始まりでもあるのだ。
people  sleeper(kuniyuki remix)
popol vuh - in den garden pharaos  (spv, 1971)
60年代末からドイツで活動していたフロリアン・フリッケによるプログレユニット、ポポル・ヴー。彼は、太古の音楽の持つ魔力を現世に復活させることができた世にも稀のアーティストといえるだろう。この作品は71年発表のセカンドアルバム。電子音とオルガン、ひたすら鳴り続けるパーカッションによるシンプルな構成だが、極めて催眠的かつサイケデリック。
スピーカーから出てくる音は、死の世界の風の声。人類はとうに滅び、この世の全てが廃墟となった涅槃寂静。聴きおわった後は、以前と違う自分がいる。
in den garden pharaos  vuh
kammerflimmer kollektief - absencen (staubgold, 2005)
孤高のエレクトロニカジャズバンド、tied & ticked torioのメンバー、thomas weeber率いる6人編成のグループ。読み方は「カマーフリマー・コレクティーフ」。
名前からして不思議な響きの彼らの奏でる音は、冷えた湖面の上を自由に漂う霧のよう。流麗なピアノをはじめとする生音の美しい重なりと、まるでそれ自体がべつの意志を持っているように絡みあう即興のSAXに、底知れない幽玄の世界を垣間見ることができる。日常と、すこし距離を置きたいときに効く一枚。
lichterloh   nachtwache, 15. september
vladislav delay - whistleblower  (huume, 2007)
ポップなサウンドで人気のluomo名義で日本で認知の進んでいる、フィンランド出身のSasu Ripatti。彼のエレクトロニカ・プロジェクトがこのヴラディスラヴ・ディレイだ。
いざ聴いてみると、明確なメロディもなく、追うべきビートもない。とっつきにくい印象を受けるが、そこにあるのは廃墟に浮かぶ細かいちりに、ひとつずつ音符を与えていくような果てのないアンビエンス。体から力を抜いて、音のさざ波に身を委ねればいい。気がついたら自分がどこにいるのかもわからなくなってしまう、夢と現実の境の音楽。淡々と映像を流し続ける、廃墟DVDのBGMにどうぞ。
whistleblower  wanted to (kill)
deadbeat - journeyman's annual  (~scape, 2007)
poleの主宰する~Scapeから、ドイツ在住Scott Monteithによるdeadbeatの通産4枚目となるアルバムは、ラガMCを起用したダンスホールを意識した作り。しかし行き場を失った負のエネルギーが迷走するような暗黒ミニマル・ダブは、今作も健在だ。
アタマの芯に響くド低音に身を任せれば、あとは時間と重力を飛び越えてトリップするのもよし、ズブズブと地底世界へ飲み込まれていくのもよし。たどり着くのはどちらも純度の高いカオスの海。脳ミソひらいて、アドレナリンをぶちまけろ!
loneliness and revelry  refund me
phelan sheppard - harps old master  (leaf, 2006)
State River Wideningのうちの二人、Keiron PhelanとDavid Sheppardからなるユニットの2ndアルバムがUKのエレクトロニカレーベル、Leafからリリース。
どこを切っても美しくて繊細な音の絡み合いは、空から舞い降りる雪の結晶のような儚さ。冷たい空気に凍みこんでいくように広がるサウンドは、朝靄に霞む遺跡ライクな廃墟を思い起こさせる。フィーチャーされたポエティックな女性ヴォーカルもこの上なくメランコリックだ。「weaving song」に挿入されるランラララ・・のコーラスにくらくら。
weaving song(myspace)  tjarno(myspace)
blockhead - music by cavelight  (ninja tune, 2004)
NY出身のトラックメイカー、blockhead。Aesop Rockへの多数の楽曲提供を経て、大御所NINJA TUNEよりインストヒップホップのアルバムをリリース。
決して上ずることの無い、落ち着き払ったビートを中心に組み立てられた温度低めの曲たちは、街の一角にひっそりと佇む廃墟のよう。ホーンとピアノの哀愁っぷりがたまらない一曲目「insomuniac olympics」は、まるで盛者必衰の物語を聞かされているような、切ない余韻を残していく。
insomniac olympics(PV)
amon tobin - chaos theory  (ninja tune, 2005)
NINJA TUNEの重鎮、アモン・トビンの通算5枚目となるアルバムは、スプリンター・セルという海外のステルス・アクションゲームのサウンドトラック。日本でいうメタルギア・ソリッドがこれに近い雰囲気だ。
ハリウッドのスパイ映画を思わせる、殺るか殺られるかの極限の精神状態を味わえるリアリティの濃い展開に、緊迫感を後押しするように繰り広げられる怒涛のbreak beats。この組み合わせは半端じゃない。廃墟の中で聴いた日には、まるで見えない何かに追われているような、そんないらない妄想に囚われてしまうかも。
el cargo(PV)  the lighthouse

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